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豊かな水資源のヒミツ

豊かな水資源のヒミツ_f0322969_22481429.jpg 「水のソムリエ」という資格をご存知ですか? ミネラルウォーターへの関心が高いイタリアから生まれた民間の資格で、日本でも資格を取る方が年々増えているそうです。資格を取った人をアクアソムリエと呼び、水と料理の相性や、体調に合わせて飲む水をアドバイスするのが主な仕事内容とのこと。

 先日、このアクアソムリエを育てる学校で、講師として水の話をしてきました。日本の水資源の豊かさについてや、おいしい水を飲むためにすべきこと、考えてほしいことなどの話です。

 日本は、降雨量、森林率、地形の3要素がどれも優れており、この奇跡の組み合わせによって豊かな水資源に恵まれています。降雨量が多いということは、それだけ良質の水、つまり淡水が手に入りやすいということです。しかし、雨が多いだけではダメ。森がなければ、降った雨はすぐ海に流れていきます。

 日本の森林率は67%で世界2位(ちなみに1位はフィンランドの73%)。国土の3分の2が森です。手入れされた森は保水率が高く、よく「天然のダム」と呼ばれますが、降った雨を一度に流してしまわず、長くたくわえてじわじわと放出する機能を持ちます。日本の川が乾季でもかれずに一定の水量を保つことができるのは、流域に天然のダムがあるからです。

 しかも、日本の地形は急峻(きゅうしゅん)で、川は岩にぶつかり波立ちながら流れていきます。実はこの「波立つ」ということが重要。これは「曝気(ばっき)」が自然に行われているということです。曝気とは、水をかくはんしたり空気を送り込んだりして、酸素を供給すること。有機汚濁物質を分解する微生物の働きを助けるのです。浄化槽や下水処理場では、わざわざブロワーで空気を送り込んで酸素を混ぜています。「機械による曝気」です。日本の川ではその作業が自然に行われているのです。日本の川は、1キロメートル流れると水がきれいになると言われていますが、急峻で波立つ川だからこそですね。

★水を汚さない方法も紹介してほしい

 私の住む千葉県には、印旛沼や手賀沼といった水質の悪さでトップクラスの湖沼があります。流れのない湖沼は水質が悪くなりやすいので、水質改善のために、湖に大きな噴水をいくつも設置して曝気するという大掛かりなものから、各家庭で食器を洗うときはお皿を紙やゴムベラでふき取り、流す汚れを最小限にとどめる、といった地道なものまで、さまざまな活動が盛んに行われています。

 アクアソムリエの仕事は料理や体調に合う水をアドバイスすることですが、水そのものを汚さない生活、水をきれいにする方法を教える、ということもやってほしいという思いをこめて話をしました。スタイリッシュなボトルに入ったミネラルウォーターを紹介しつつ、日本の水をおいしくするには地道にアクリルふきんを使うことも役に立つのですよ、と言ってほしいんですね。おしゃれなイメージの職業ですから、そういう生活感たっぷりの話をすると引かれちゃうかな、と思ったのですが、受講生のみなさん、最後には大きくうなずきながら聴いてくださいました。おいしい水を飲むためには努力を惜しまない!という気概が見えて、嬉しいひと時でした。

2010年11月11日

by akaboshi-ryuu-ego | 2014-07-05 22:47


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